2011年9月4日日曜日

企業が求めているグローバル人材

人事部の採用担当は「いい学生が採れない」と嘆く。社会構造の変化は企業に多彩な人材、能力、スキルを求めている。今、企業で昇進できる人材の条件を人事部が語りつくす。

>>「人事部証言:英語、スキル、能力……新出世の条件とは」の目次はこちら

不動産 アメリカのように学生時代に企業のインターンシップを行い、本人も働く意思があり、会社もほしいとなれば、学生でも入社することがあってもいい。インターンシップなどを通じて優秀な人材を随時確保できれば、採用コストも圧縮できる。

化学 政府は「雇用、雇用」といい、新卒採用枠を卒業後3年までに延長するようなことを言っている。働く意思のある人、能力のある人は自ら企業に売り込むべきで、もし制度をつくれば、卒業しても3年間は新卒で採ってくれると安心して、逆にモラトリアムに陥ってしまう。

IT 今、意識的に採ろうとしているのはリーダーシップのある人材だ。スペシャリティも大事だが、その中でもリーダーシップが発揮できそうなタイプがほしい。先行きが不透明ななかでビジネスを変革したり、新しいものをつくれなければ企業の成長はない。それをリードしていく人材を積極的に採用したい。

流通 リーダーシップのある人材はうちもほしいが、見極めるのはなかなか難しい。人事担当者はそれぞれ独自の見極め方を持っているだろうが、僕の場合、表現は難しいが22~23歳ぐらいまでに「何かを背負った経験がある人」に着目している。たとえば、新党さきがけの代表だった武村正義氏は旧自治省の面接官だった後藤田正晴さんが、すでに妻子がいるということで採用したらしい。それに近いイメージだ。たとえば田舎から期待を背負って上京した人、あるいは体育会系にしても大学4年間を通じて大学の名誉や名声を汚さないように背負ってきた人でもある。つまり、追い詰められながらも結果を出していかなければならない経験を積んだ人ということだ。

サービス 同じスポーツでもサークルの幹事なんてどうでもいいし、ゼミ長もたいしたことはない(笑)。最初からハンディを背負ってチャレンジする人だ。でもそういう学生っている?

流通 なかなかいないね(笑)。

化学 今、ほしいのはグローバル人材だ。グローバル化に対応するために海外要員の確保と育成に乗り出している。海外経験のある社員をリストアップし、内部で養成すると同時に、新卒も全員ではないが海外で活躍できそうな学生を求めている。海外でのビジネスはある意味で切った張ったの世界だ。自分で考え、行動できる精神的タフさを持った学生がほしい。

IT グローバル要員は日本人だけに限らない。アジアの外国人留学生だけではなく、アメリカ人も採用しているが、北米市場をターゲットとする事業戦略の一環だ。日本語ができることが要件だが、さらにアメリカのカルチャーやマーケットの知識を持った人材を新卒扱いで採用し、人材としてプールしておきたい。中長期的には彼らが生み出した製品をアメリカ市場に出し、彼らがアメリカでオペレーションすることも想定している。

不動産 うちも毎年中国籍の留学生を数人採用している。中国を含めた海外の不動産開発の展開という事業戦略もあるが、それ以上に留学生に魅力を感じるのは、中国、インドの学生は非常に目的意識が高いことだ。彼ら、彼女らは日本のマーケットで仕事をしたいというが、根底には日本で活躍し、その後、自国に戻ってナンバーワンになりたいという強い目的意識がある。日本の学生はせいぜい課長になれればいいという程度だ(笑)。

化学 外国人も日本の学生と同じルール、目線で選考しているが、外国人枠ではなく優秀であれば積極的に採用していきたい。今は新卒の1割程度だが、個人的には半分が外国人でもいいと思っている。じつは中国や東南アジア、インドの大学にもインターンなどで積極的にアプローチして採用活動を行っている。現地での知名度の向上やリクルート活動も本格化していくつもりだ。

商社 日本の大学や学生のレベルは世界の中ではそんなに高くない。海外でのビジネスを展開していくには日本の新卒採用にばかり力を入れていられない。海外の大学との共同研究などを通じて優秀な学生を確保することが、グローバル競争に打ち勝つ最大の条件になってくる。

※すべて雑誌掲載当時







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